第5話 内側へ—科学と東洋思想の間

形を失った後、僕は内側へ向かった。

単なる精神世界への逃避ではなかった。

大学院の博士後期課程に戻り、地球環境科学を修めた。

科学の誠実さを手放したくなかった。同時に、東洋思想の深さも手放したくなかった。

その両方が交わるスペースに、自分の場所があると感じていた。


タオヨガ、瞑想、呼吸法の実践を深めた。その実践をシェアすることを始めた。

コロナ禍の真っ只中だったから、ただ誰かに届けばいいと静かに思っていた。

ターゲットとか、戦略とか、それまでの人生で染み付いていたようなことは考えなかった。

自然と人が集まってきてくれた。

変化は、静かに起きた。

長年患っていた持病がずいぶん楽になった、と喜んだ人がいた。

自分が愛おしくなり、仕事で多くの人に喜んでもらえて収入が十倍になった、と報告しに来た人がいた。

もちろんそういった結果を出したのは僕ではないし、成果を保証することもしない。しかし誰でも、内面が変わると、外の世界が動き始めることがある。

周りの方々が、それを見せてくれた。そしてそれは、僕自身が、この10数年間タオと生きてきてわかっていたことでもあった。


内が、外を動かす。

外が内を変えるのではなく、内が整うと外が自然に動き、すべてが調い始める。

それは理論ではなく、目の前で起きている現実だった。


次回最終話 無為自然とは

-手放す恐れを超えて