28年前の旅から始まる物語①

ボルネオ島の伐採の先にあるもの

 

今から28年前、僕はボルネオ島の熱帯林を訪れた。

当時そこで見た風景、出会った人びとの言葉は、長い年月を経た今も私の中で静かに息づいている。

本稿はその旅の記憶と、そこから問い続けてきたことを綴った記録だ。

 

空から見たボルネオ島の森は、衝撃的だった。至るところに広がる伐採の跡。森の奥深くまで進んでも、伐採のために造られた林道が網の目のように張り巡らされていた。

蛇行する川は茶色く濁り、河口からは泥水がエメラルドグリーンの海へと流れ込んでいるのが見えていた。

 

熱帯地域では、バケツをひっくり返したような激しいスコールが頻繁に降る。

本来、こうした雨の多くは、直接地表に当たることはない。うっそうと茂る森の樹冠が雨滴の衝撃を和らげ、葉や幹を伝ってゆっくりと地面へ届くからだ。

 

しかし、森林が伐採されると状況は一変する。露出した地表は豪雨にさらされ、表土が急速に流出してしまう。その土砂は鉄砲水のように川へ流れ込み、河川を濁らせる。

実際、熱帯林の伐採は土壌侵食の増大、河川の濁度上昇、漁業資源の減少を引き起こすことが、数多くの研究で報告されている。

現地で「最近は川で魚が獲れなくなった」と語られていた理由は、まさにこの環境変化にあるのだ。

 

当時、ボルネオ島で伐り出された木材の主要な輸出先の一つは日本だった。

僕たちのの木材消費が、長い時間をかけて育まれてきた森林の豊かさを失わせている。

そう考えたとき、かつての自分自身も含め、いったいどれほどの人がその事実を自覚しているのだろうかと、胸が締めつけられた。